今日はオレの誕生日。
普段なら忘れてるところだけど、何故かオレの部屋のカレンダーにちゃっかりと9月21日が赤丸で囲まれているのだから嫌で
も忘れない。ついでにニコニコしながらオレの部屋のカレンダーに赤丸を書いた人物の嬉しそうな横顔も忘れない。
金曜日、つまりは平日。
当然学校から帰って来たオレは何か満ち足りないというか、焦燥感があった。
普通に学校でも色んな子からプレゼントは貰ったし、野球部の連中からだって当然祝われた。
だけど、なーんか足りない。
嫌だけど、何となく自分で原因が解ってしまったオレは、携帯片手に窓を開け、隣の家の窓を見つめた。そして電話帳の画面
を出し、アイツの名前を出して、電話をかける。
電気点けっ放しで、でも何の動きもなかった部屋に、黒い影がもぞもぞと動いたのが見えた。あの様子からしてアイツ寝てやが
ったなちくしょう。
『…あー…もしもし…?』
「お前どんだけ眠いんだよ」
『もう今日は眠いんだよー。ふあぁぁ…』
「とにかく今すぐ窓開けてこっち来い」
『えー、やだよメンドイ。』
「良いからさっさと来やがれこの阿呆!!!」
『あっ、阿呆!? 何で私がアンタにアホ呼ばわりされなきゃいけないのよ!!!』
「良いからさっさと来いっつってんだろ!!」
『やだ! 何か慎吾怒ってるからやだ!!!』
「……ほぉ…? 、んな事言っといてタダで済むと思うなよ…?」
『……え』
オレは素早く開け放っていた窓から身を乗り出しの部屋の窓に手をかけた。同時にプツリと回線を切る。
こんだけの距離だ、必要ねぇだろ。当然のように通話時間と値段が出された。使い慣れてるから、何かもう解る。
その後はシンプルな待ち受けに戻った。待ち受け画面のカレンダーがオレの誕生日だという事をわざとらしく
表示しているような気になった。
少しだけ窓が開けかけた時、アイツが意外にもそれに勘付いたらしくガードしていて窓が開かなくなった。
そりゃあ確かにオレは今かなり危ない状況だし? 右手は自分の部屋の方にかけたまんまなのに左腕だけでこんな体勢で両
手使って窓閉めようとするアイツには到底立場的にはオレが勝つ見込み少ないけど?
男の意地とプライドにかけてもここは俺が勝つ!!!!
「まっけねぇぞ、ー!!!」
「えっ、えー!? ちょっ、慎吾何か趣旨変わっちゃってない!?」
「球児なめんなよぉお!!!」
「なっ、なめてない!! だからやめてぇぇええ!!!」
最早窓1枚を挟んでの激しい攻防戦だ。
も譲る気ななさそうだし、こうなったら純粋に力で勝ってやる。
「っ、おらぁっ!!」
「う、わっ…!!?」
ほんの一瞬、まだ多少の抵抗はあったが、すぐにその力も消えてオレの目の前にはビックリしたような、怒られる事にビビッて
いる子供のような、そして何かに怒っているような色を表情に浮かべたがいた。
「オレの勝ち〜」
「どーいうカッコでいんのよ、あんた…」
「オレいまここでどこか手足のどっか一箇所でも滑らしたら危ねぇよな」
「それって自分の部屋に戻れば良いじゃん」
「戦勝国は敗戦国から戦争に使った額の賠償金を貰うってやつ、知らない?」
「………入れば」
「はーい、物解りの良い子でお兄ちゃんは助かるよ」
「誰が兄ちゃんだ、誰が」
そんな取りとめもない会話を交わしながらは心底嫌そうな顔をしてオレを部屋に招き入れた。
おい、それが今日の主役に
対する態度か。
「オレが何でここに来たのか解りますか〜?」
「さぁ」
「即答かよテメェ。じゃあ今日は何月何日だ」
「9月21日。」
「何の日だ」
「えーっと…世界アルツハイマーデー」
「何でだよ! 何でそんなマニアックなとこ突くんだよお前は!!!」
「えー、だって正直に言っちゃう自分が途轍もなく嫌に感じるから。」
「どういう意味だ、それは。ほら、今日は! 誰の誕生日なんだ!!?」
「モロに答え言っちゃってるようなもんじゃん。はいはい、睨まないでよ、慎吾のでしょー」
「その彼氏の誕生日に「彼氏じゃない。」
「……その幼馴染の誕生日に何も祝ってやらないってどーいう事だよ」
「え…いや、皆に祝って貰ってたから良いかなーって」
………コイツはつまりあれか。オレが学校で皆から祝われる事によって自分は別に何もやらなくて良いかーとか思って楽しよう
って魂胆か……許さねぇ。
「誰がんな事許したよ」
「いや、許すも何も……って慎吾、プレゼント貰えなくて怒ってんの?」
「オレはそんな女々しい男じゃねぇよ」
「いや、充分女々しいよ、今んとこ」
このやろ…!
ふと辺りを見回してみるがあまりオレに送るプレゼントを準備していたという形跡も見られない。という事は準備してないという
か忘れられていた…!?
いやいや、それはないだろう。だってオレの部屋に来て21日に赤丸を書いたのは紛れもなくこいつだ。目の前の幼馴染だ。
が書いたという事実は明白である。忘れている事はそうそうないとは思う…んだけど。
何せコイツがオレの部屋の壁掛けカレンダーに赤丸を書いて去って行ったのは1ヶ月ほど前だ。早くから準備していてくれるの
かと期待していたが、早過ぎた為にコイツの記憶からは抹消されていたんだろうか。
あんまりだ、普通唯一無二の幼馴染の誕生日を忘れる事なんてまずないだろう。オレはちゃんと憶えてるぞ、の誕生日。
視線を部屋のカレンダーに向けて見ると、一瞬オレの部屋かと思えるぐらいに、カレンダーの21日赤丸が書かれていた。
……忘れたという線は消しても良いな、うん。
オレは勝手にそれだけで舞い上がってに解っておきながらも嬉々としながら訊いた(オレってポーカーフェイスなの)。
「プレゼントってやっぱし準備してないわけ?」
「うん。」
「ムカつくぐらい清々しいな、お前…! じゃあさ、オレ1個お願い事言って良い?」
「やだ。慎吾がそんなニコニコしながら要求を出して来るって事はきっと私には損だ」
「それはオレに失礼だと解れ。良いから聞けって」
「えー……」
「21日に赤丸書いておきながらプレゼントの準備ナシとかひどくねー?」
「(見つけやがったのかよ…) ………何、言いなよ」
コイツの顔が今から変わるんだなー、とか思うと勝手に先を見越して笑ってしまいそうになる。やめろ、傍から見たら変人だぞ
オレ。
の顔がポカンって呆けるのを予想して、オレは要求を口にした。
「オレを幼馴染から彼氏に昇格させてみる気、ない?」
オレの笑った顔と、の表情は正に対照的だった。
⇒おぅ、慎吾さん…!!!orz
何か失敗した感がひしひしと伝わって参りますがまぁそこはスルーでお願いします。
何かあれだ、これ。山なしオチなし意味なし。これぞやおいです。
主人公実は用意してたり。慎吾さんが学校で女子からもたくさんプレゼント貰ってたから拗ねたとでも思ってて下さい。
慎吾さんのご都合主義な想像力に任せよう!(すいませんご都合主義なのは私の頭でっす!)
2007.9.21