「……高校ってモンをなめてたわ」
しみじみとそう思った、9月の教室。
夏真っ盛りの7、8月に比べてやや気温は下がるものの、9月と言ってもまだまだ暑い。やはり今問題の地球温暖化の所為なのか。暦では秋の筈なんだけど、と思いながら私は必死で手を動かす。この行為にもいささか疲れが生じて来た。
こーいう時には、持ち手の部分にシリコンだとか柔らかい物質が使われているシャーペンは本当に役立つ。一気にものを書く時も全然痛くならないから画期的だ。
中学校とは違って高校には冷暖房が備え付けられている。ここはなんともありがたい。冬場はどうにか厚着で乗り越えられなくもないけど、夏場なんてものはまるで生徒を生殺しする為のようなものでしかないと思っていた。扇風機すらなかったし。いや、あったとしてもどうせ生暖かい風が頬を撫ぜて行くだけ。
放課後で生徒が少なくなった今、私は勝手に冷暖房を点けて風が最も良く当たる席へと移動した。
良いな、この席。ホント良く当たるわ。次の席替えではここ引きたいなー、なんて現実逃避してしまう。いや、別に現実を逃避しているワケではない。「今」を逃避しているというだけで。
この七面倒臭い夏休みの宿題(残り)、私にとってはただの地獄の中にある内の一つの門でしかないのだ。その一つ一つが手強い。
「こんなモン……おりゃ!!」
数字とxが所狭しと敷き詰められている教科書を手に取り、勢い良く投げた。最早これは私にとってのストレス解消だとかそれ以前の問題かも知れない。
過去に公共物を5回は壊した事のある私にはこれはクセでしかないのだろうか。卒業前にも記念に何か壊そうとしていたぐらいだし。チッ、今思えばどっかの教室の掃除箱でも壊して来れば良かったな…!!
そんな後悔の念を込めらてたような教科書は、真っ直ぐな軌道を保ったまま黒板へガン!と大きな音を立てて直撃し、一度チョークを置いてある桟に引っ掛かって床に落ちた。きっと今あの教科書は地面とお友達になれた事だろう。
「おいコラ
! そーいう事を平気ですんな!!」
「ちかァー、私無理。こんなの終わるワケがなーい!!!」
「知るか!!」
教室のドアを開けて入って来た元親にギリギリ今のを目撃されていたらしく、軽くお叱りの言葉を食らう。
ちなみに何でコイツはもう宿題全部終えてんだよ、夏休み期間中に。
不良って普通そーいうとこ無視しない? 寧ろ何で宿題ちゃんとやってんだよって。
コイツがこんな時間まで残っているのはただの暇潰しなだけで、私を手伝ってくれる気配はない。ちくしょ、この銀髪毟ってやりたい。
元親は「あーあー」なんて言いながら教科書に軽くついたチョークの粉を払って届けてくれた。
コレが本当にうちの学校の不良の頭なんだろうか。どう見たって良い感じのパシリじゃないか。
「オラ」
「ありがと。」
「もう投げんなよお前」
「うん、おりゃ」
「ガッ!! …テッメェェェエエエエエエ!!! たった今投げんなっつったろうが!! しかも何で俺の顔面に向かって投げる!!!?」
「良いじゃん、気分だよ。ほら、鼻血が出て男前度アップですぜ、ドン」
「ドンって言うな、俺はマフィアのボスじゃねェ。そもそも鼻血で上がるのは惨めさだけだろうが!!」
「そんなコトない!! 元親は血が似合う男だよ!! ほらー、幸村だって伊達だってその辺アップしてるでしょー」
「知るか。さっさと終わらせろよ」
ちぇ。個人的には私大好きなんだけどなァ、男子が鼻血出してるのって。あからさまに惨めっぽいのは嫌だけどさ…強そうな男子が喧嘩で出した鼻血の跡は良いと思うよ。
しかし今の元親のはダラダラ流れすぎてて余り良い感じとは言えない。うーん、教科書の角が当たっちゃったんだろうな。
ちなみに私の教科書(数学A)は無傷だった。さっきの私が投げた際に出来た傷はナシよ、ナシ。
「大体なんでこんなに溜め込んでたんだよ!? 真田以上だぞ、おめェ…」
「マジか。やっべ、私相当じゃん!!」
「ついで言うと真田はさっき宿題全部やり終えたから明日から部活復帰だ」
「何だとォォオオオオオ!!? アイツの宿題溜め込んでた量が私のより少なかったってコト!?」
「まぁ、そーなるだろうな」
「……いや、それはないっしょ。きっとギリギリなところで見兼ねた佐助が殆ど手伝ってくれたに違いないよ。」
「……お前はそんなに真田に敗けたくないのか」
「当たり前でしょ!? 幸村に敗けたら私もう…!! アイツに敗けて良いのは私の得意スポーツ以外と食事量&スピードのみ!!!」
「……そーかい」
そして完全下校を告げる鐘が鳴ってしまい、私と元親は2人揃って「「あ。」」なんてマヌケな声を出して、
どうせ残った量が帰宅してから取り組んでも終わるワケがなく、
私は明日もまた部活に出れない運命を悟り、
夏休み中の部活しかしていなかった自分を恨むのだった。
あとがき
学生なんてそんなもん。(´ー`)
私もこれを経験しましたー。学校の部活には入ってなかったから別段気にはなりませんでしたけど、習い事でのスポーツが後から控えてて…orz
これほぼ去年に書いたブツじゃないか…orz ちょっと付け加えただけじゃん。||orz
2008.09.15
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