奥州の覇者は農民達の一揆を制圧した事により、様々なものを背負うようになってしまった。
「近々軍議の召集もなさるおつもりですか?」
気配もなしに現れた忍が主に声を掛けた。主である政宗は別段驚いた様子もなく、慣れた手付きで地図を広げ碁盤のようにして黒い碁石を打っていく。傍らには様々な書物や巻物も広げられている。
凄く熱心な様子なので、は朝議の時間だと知らせるのを止めた。どうせ本人も解っているだろうから。
「あァ」
独眼竜は少しだけ口の端を歪ませた。
「魔王が討たれた。今や明智の首取りだ」
「ですね」
山崎の方がまだ騒がしいようですし、とは続けた。
政宗は思い詰めた顔のまま、顔だけ横を向いてと向き合った。手を動かす度にその内にある碁石がぶつかり合って音を出した。
「Ah…。山崎、ねェ…」
「は。……明智を、討つおつもりですか?」
「HA!! それはそれで良いんじゃねェか?」
自分が口を出すべき内容ではない。はそれに大しては何も言わず、話題を変えた。
「……豊臣軍が出兵した模様」
「Really!!?」
「政宗様、落ち着いて下さい」
突然立ち上がった政宗を、は心配して座るよう奨めた。いくら常人離れした回復力で傷が塞がったとは言え、まだ恐いだろう。
先日遭遇した豊臣秀吉―――。あの威圧感にはただならぬものがあった。それは目の前で身体で体験した政宗自身が良く解っている。今までその事実を忘れていたのは、あの紅蓮の男の所為だろうか―――。
「およそ十万と五千かと…。どうやら狙いは「浅井か」
「!! ……知っていらしたので?」
「いや、今丁度豊臣が次はどこに攻め入るか打算してたところだ」
やはりこの方には軍師としての才能が大いにある―――。本人、そう思わざるを得なかった。
「浅井は兵が少ねェからなァ……。大方豊臣に勝鬨上がるだろ」
「は。浅井の方はおよそ八千ほどでしたので、政宗様の読み通りかと」
「……浅井まで行ったのか?」
「え? あ、はい。偵察に行って参りました」
何か自分はおかしい事でも言っただろうか。会話内容を思い出してみてもそうは思えない。
しかし目の前の政宗は何故か驚いた顔をしている。
(な、何か私やっちゃった…!!?)
主に対しての失態―――部下にしてみればこれ以上恐ろしい事はない。
お得意の身軽さでどうにか逃げられるかも知れないけど、それはそれで後々恐い。
いつまで呆けているのか解らなかった政宗が、笑いながらの頭をポンポンと叩いて来た。益々はワケが解らなくなって、混乱するばかりだ。
「えっ、ま、政宗様っ!?」
「HA! 良く出来た忍じゃねェか!! 仕事も早ェし、何も言う事なしだぜ!!! なァ、!」
「え、あ、あ、ありがとうございます…?」
この政宗の上機嫌はいったいどこから来るものなのだろうか。
「あ、あの、政宗様…?」
「What?」
「わ、私何か、粗相でも致しましたか…?」
こんな事を訊くだけでも微々たるものだが恐怖が付き纏う。
すると政宗はまたキョトンとした顔をして、どう解釈してのやら、今度は大笑いだ。最早にしてみれば馬鹿にされているとしか思えない。
「アンタはずっとそのままでいろよ!!」
(………どういう意味……?)
今は大人しく返事をして微笑を浮かべておくに限る。
あとがき
えー……。ただ何となく…漫画辺りのところが書きたくなっただけでして…。
こーいう本当の戦国時代みたいな感じの雰囲気を醸し出すのが大好きです。出せてないけど。
全く夢っぽくないですけどね。史実とか読んでると楽しくなっちゃってその勢いで書き上げちゃったんですよ…!!orz
2008/03/01
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