屈する事なんて、縋る事なんてないと思っていたのに。
自分が1番馬鹿だったと気付いた。
弱い人間は身体を小さく丸めて自分を抱きかかえるようにして恐怖の対象が過ぎて行くのを待つのだ。
私はそんな弱い生き方なんてしないと、常々心掛けていた。
どうして待つ? 自ら追い払えば良いじゃないか。
皆馬鹿だと思っていた。自分の身は自分で守るものなのだ。他人に縋るな。それは弱味を見せると同じ事。
無駄に誇りの高い人間にとってそれは屈辱以外の何ものでもない。
私はそっちの部類に入ってしまっていたので、否応無しに自分を鍛える事だけを考えていた。
他人に縋り、弱味を曝け出す―――それがどれだけ心に深い傷を残す事か、私は知っているのだ。
絶対にならないと、決心していたのに。
目の前の男の言葉、形相、動作、全てが私に悪意を持って迫っている。
知らなかったんだ―――本気で自分に悪意を持った人間がどれほど恐ろしいのか、なんて。
武道の心得はあった。かなりの腕だと褒められた事だってある。
大丈夫だと、思っていたのに。
目の前のこの男の鬼のような恐ろしさはどこから来るのだろう。
さっき押された時の力、あれは女とは比べてはいけないものだと悟った。根っこから違うのだ、男と女というものは。
押されると同時に角で額を打った。頭部の方は特に少しでも怪我をすれば血が大量に出る箇所なのだ。自分の血が自分の顔を流れていくのを感じながら、余計に恐怖に駆られた。思わず涙が滲む。過呼吸、震え。焦点が合わない。
縋らないと、決めていたのに―――。
助けて、助けて、お願い―――
佐助
ほんの数秒、私の思考は停止した。
「悪いけどさー、これ以上は俺様流石に傍観してらんないわけ」
「…さ…佐助……?」
「そーだよ。ごめんね、
。止めるの遅くなっちゃった」
そっと背後から抱きすくめられ、いとも簡単に私の震えや異常行動はおさまった。危なかった。あのままだったら絶対に私おかしくなりそうだった。
「少し待ってて。後ろ向いてた方が良いよ」
今から何をするかを知っていた私は、その場では言われた通りに後ろを向いた。
あの男の怒鳴り声。だけど、すぐに佐助の声しかしなくなった。そっと振り向けば、佐助はこちらに背を向けたまま、行をこなしていた。私はただその綺麗な色の髪を見つめ、声もなく涙を流した。
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「駄目でしょー、無理しちゃあ! あーいう時はっ、男の俺とか旦那とかを呼ぶもんなの!!
ちゃん、解るゥ!?」
「…だって、倒せるって思ってた……」
「…無理だったんでしょ?」
「………………はい。」
最早返す言葉もございません。
素直に謝ると、佐助はすぐに額の傷の手当てをしてくれた。
さっきの男とは対照的なそれに、私はひどく安堵した。
あとがき
み、短いっ…!!orz
そしてこれこそがやおいと言うのです(やまなしおちなしいみない)。
突発的に佐助シリアスが書きたくなっただけなんです…! 何でこんなBASARAキャラって皆素敵なんだ…!!!
2008/02/24
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