この間の休みで何故か私と榛名は親公認のカップルにされてしまった。おいおい、親に言っちゃってどうするんだよ。

お母さん面食いだから榛名の事気に入っちゃってるしね! 私に逃げ道はないのか!!!


そんな憂鬱な思いを抱えながらの月曜日。登校だ。あんな事をされてしまったら、何か会いたくないんだよねぇ……。どんな

顔して会えって言うのよ。


面倒な階段を上り(どうしてうちの学校って2年生が1番上の階なんだ)、廊下を歩いて教室のドアを開ける。私の教室は階

段を登って左に曲がればすぐなのだ。

ガラッ、とお馴染みの音を立ててドアを開けた。こちらを全員が見て一気に静まり返った。え、何かタイミング悪かったとか?


ビクビクしながら席に着くと、前の席のがニヤニヤとした表情でこちらを向いた。

アレかな、私が昨日ドタキャンした事をまだ根に持ってるのかな。うちの事情を知ってるんだから許してくれたって良いじゃん、

ケチめ!









「……昨日はすみませんでした」

「は? あぁ、別にそれは良いけど」

「何だ。なら良いや」

「何よ、それ」









数人はおしゃべりを始めたけど、まだこの教室は静かだ。チラチラとこちらの様子を窺ってくる奴らが大勢。正直ウザいと言う

か、何と言うか。

私はさっきよりも小声でに話しかけた。









「ねぇ、何でこんなに静かなワケ? と言うかどうして私観察されなきゃならんのよ」

「噂よ、噂」

「噂? 私何か大それた事したっけ…?」

「したわよ。あんた、あの榛名と付き合ってんでしょ?」





























「………………………………………………………………………………はぁ!!?」

「え、違うの? だって榛名が野球部に言いふらかして、野球部が皆に広めて、噂がどんどん広がって―――…って感じらし

いよ」

「…な、何で……?」

「知らなーい。何アンタ、どうやってアイツ落としたわけ!?」

「いや……知らないよ……」














それから先はが何か言っているっぽかったけど、その言葉は全く私の頭の中に入って来てはいなかった。





























あっという間に昼休み。ヤバい、今日の午前中の授業全然頭に入らなかった!!

あんだけボーッとしてて当てられなかったのが奇跡だよね…!! 神様、今日だけは感謝します。

そんな心にもない事を思っていると、頭上でクラスメイトの……野口(だった筈)の声がした。









「おーい、ー。呼び出しだぜー」

「はー? 嫌だよ、そんなの。榛名のファンクラブから手でも回って来たワケ? メンドいからパス」

「違うって、お前の彼氏だって」

「私は彼氏いません一人身ですー。と言うか平和主義者なんで秋丸レベルじゃないと呼び出しには応じません」

「んな事言っても……あ。」

「…あ?」









うつ伏せていた顔を上げたら目の前にはあの小憎たらしい顔がある(ってかさっきまでに髪いじられてた所為で頭が痛

い)。









「お前、オレが呼んだらすぐに来いよな」

「嫌だよ。そんなパシリみたいな扱い」

「ちっげぇよ、彼女としてだろ!」

「………なっ…………、なっ、う、あ!」

「何言ってんのお前」

「…ちっ、違う違う違う! 私とアンタは付き合ってなんかいない!!」

「はぁ!? お前昨日の事忘れたのかよ!?」

「いや、忘れたワケじゃないけど、そ、その、うぇ、あ、あれはまた別というか」

「告白に別も何もねーだろ」

「あんなん告白じゃないよ! 何言ってんの!? ただのドッキリじゃん!!

ドッキリ!!? テメェ人の告白をドッキリとは何だよ、失礼だな!!」

「失礼なのはそっちじゃん! 勝手に家来てご飯まで食べておこがましい!!」

「はぁ!? 大体オレあそこがお前ん家だって知らなかったっての!! 偶然だろ!!」

「じゃあその偶然に便乗して人の家でタダ飯食ってったのは誰よ!!」

「タダ飯じゃねぇだろ、ちゃんとその後働いただろ!!」

「たかが30分ウェイターやったくらいで良いと思ったワケ!?」

「お前が『よし、30分ウェイターやって。それで元取るから』とか言ったんじゃねぇかよ!!」

「結局アンタ全然役に立たなかったじゃん! そのクセ無駄にご飯だけはたくさ「煩い、!! 痴話喧嘩ならよそでしなさ

い!!!」

「痴話喧嘩じゃない!!!!!!」

「え、違ぇの?」

「榛名!? アンタ何言ってんの!!!??」




結局またその場で喧嘩をおっ始めそうだったので、から私達は追い出された。

ひどい、榛名だけ追い出してくれれば良かったのに。


あぁ、もうそろそろ昼休みも終わっちゃう。時計を見てふとそう思いながら空腹感からそう言えばまだ昼食食べてなかったなと

思い出した。


ここは最上階。なんだけど、あと1つだけ階段がある。小さな踊り場と掃除用具箱が置いてある程度のものだ。

人も殆どまばらになって来たので、そこでちょっとした話をする事にした。









「…ねぇ、私達付き合ってる事になっちゃってるんですか」

「何でお前そう自覚ねぇんだよ。そうに決まってんだろ。昨日オレお前の親に挨拶したじゃん」

「えー、だっていきなり『さんとお付き合いさせて頂いてます』と言われても…」

「……ああ、そうか。オレが1つ肝心な事忘れてたんだな!」

「へ?」









榛名は何かに気付いたらしい。何だ、何か忘れてたのか。

実は昨日の挨拶自体が間違いでした、とか!?(あ、でもさっきそれ榛名本人で言ってたから間違いだったという線は薄いな。

望みが1つ失われた…)









「なぁ、

いきなり名前呼びですか。…何?」









踊り場の壁に2人並んで同じ方向を向いたまま、榛名は突然何か切り出してきた。









「オレ、お前の事好きなんだけどさ、付き合ってくんねぇ?」














……榛名の中って色々順番とかが逆転してんだなぁ(だって告白の前に予告ナシで親に挨拶ってないでしょ)、なんて思いな

がら、私は後に引き返せそうにもないので5限目のチャイムが鳴ると同時にOKを出してしまった。
























「ねぇ、結局何の為に昼休みに呼び出したワケ?」

「あー? 一緒に飯食おうって」

「意味ないじゃん!!!」

「でもオレ食ったんだよな」

「…お前…!!(私まだ食べてないんだぞ…!!!)」











うわーい、榛名ー。突発的に浮かんで来た。本当は誕生日話の方が浮かんで来たんですが、それは5月24日の方が良い
だろうと…(ってもう来年まで待つしかないけど)。
この子達のは楽しいなぁ♪
2007.8.15