「お願いします乗せてって下さい。」
そんな嫌そうな顔しないでよお願い!!!
Boy meets Girl
幼馴染という関係名称。
「……何でなんかを。」
「なんかって酷いな、なんかって。ちょっ、マジで立ってるだけで辛いんです、お願いしますこんなんじゃ徒歩で登校なんて無理ありえない」
「あぁ? 何、お前、とうとう殺りあったか。」
「どうしてアンタは私イコール喧嘩とか殺し合いする人種としか見れないの。最悪じゃん」
元希はさも面倒そうに私を見やる。んだとやんのかこの野郎。
……いけないいけない。こーいう性格がさっきのような誤解を与えるのよ。うん。
「とにかく私今歩くのでも精一杯というか立ってるだけで限界。」
「何で」
「……筋肉痛。」
「……ふーん」
「何だよ!? その興味なさそうな返事!! 私今凄い悲しかったんだけど!!!」
「あー、はいはい。ほら、乗れよ」
「………………………え?」
「だから乗せてやるっつってんだろ。俺先行って良い?」
「あっ、ご、ごめんなさい! あ、ありがとう!!」
あれ、珍しい。というかホント優しい。おいおいおいこんなに晴天なのに午後から雨とか言わないでよね!?
それぐらい元希が私に対して優しいというのが日常から考えるとありえない事なのだ。
「ー、乗ったかー」
「おうー」
「出すぞー」
「ういー」
なんて馬鹿らしい会話だろうか(これ会話として成り立ってる?)。
急いで私は元希の自転車の後ろの荷台に腰掛けた。いつもは立って乗るのが好きなんだけど、足が筋肉痛な為そこは無理に決まってる。あぁ、痛いイタイ!!!(年寄りみたいとか思わないでよ!?)
「っつーかお前何で筋肉痛なんだ?」
「んー? 文化祭の出し物の練習ー。ほら、私グラウンド部門取ったからさぁ、今年は」
「あぁ…。今年グラウンド何やんだっけ?」
「ソーラン節。」
「またお前は…!」
「何よー! ソーランを馬鹿にしてるなお前!! 私はこれがしたいが為に炎天下の中激しい運動をし、休み時間も削って練習をさせられるグラウンド部門を選んだのに!!!」
「俺には解る、お前は将来絶対どっかで損する。」
「そんな確信はいらんわ!!!」
自転車に乗って、おまけに2人乗りでこんなにギャーギャー早朝から馬鹿騒ぎしてるんだからきっとご近所迷惑なんだろうなぁとか思いつつもそれを再開した。
「あ、そー言えばドまん前じゃね?」
「そーだよ。1番前には1番上手な人間がなれるんですよ…!! 私選ばれたんだ!!!」
「へー」
「もー嬉しい。あれに全てを懸けた甲斐があったよ」
「少しはそれに対する情熱を別のものに向ければ良いのにな」
「黙らっしゃい! 私はこれに全神経を集中させて全てを注ぎ込み踊るのよ」
「………男みたいに叫んで?」
「うん。見てなさいよ、男を見せてやる」
いや、それ女が言うセリフじゃねぇし。
なんて元希の言葉はまぁ聞かなかった事にしよっと。
元希が私に対して「お前は絶対女じゃない」って言って、私が元希の頭を殴ってギャーギャー騒いで自転車がグラついて思わず勢い良く地面に足を着いた私の叫び声が響くのはもう少しで見える校門の前。