「童話って実は恐いよね」
それは私の思いつきで発したひと言から始まった。
「いきなり発言したかと思えばそんな内容か。お前マジで黙ってて」
「ちょっ、榛名ひどい! 対応が最近益々ひどい気がすんだけど!? ねぇ、秋丸!!」
「え、そこで俺に振るの!? ……でも実際本当の童話って恐いよね」
「は!?」
「いた! 私は今ここに仲間を見つけた!!! 最高だよー、秋丸。心の友と呼んで良いですか」
「お前結局何言いたいのかはっきりしろよ。」
「だから童話って実は表では綺麗にしておいて裏ではマフィアも真っ青なおっそろしい事やってるってことよ」
「はぁ?」
「あれ、榛名童話知らない?」
「ふっざけんなよ秋丸、俺をそんなにコケにしたいか」
「え、だって…ねぇ?」
「ねぇ?」
「ウゼェ! お前らウゼェ!!!」
何コイツ、さっきからウゼェの連発じゃん。さっきから否定の言葉しか出さないよ。
ここに涼音先輩がいれば大丈夫だったろうになぁ。
「大体なぁ、、何で今更童話なんだよ」
「んー、昨日テレビでシンデレラの裏が暴露されてましてね」
「…うわ」
「きっと榛名は内容知らないクセにそんな対応をとってるね」
「んだとテメェ! 俺だって普通に知ってるに決まってんだろ!!」
「じゃあ内容は!!」
「……あー、あれだよ。継母にこき使われるんだよ」
「それ普通だよ。全然残酷じゃない。」
「はぁっ!? っ、おまっ、あれはどう見たって残酷だろ!!!」
「榛名の残酷のレベルって低いな! じゃあ例えば何させられてたのさ、シンデレラは。アンタの言う残酷な目に遭った灰被り娘は!!!」
「お前真剣にウゼェな。あー、ボロボロの服着せられて継母と意地悪な姉に家事やら何やらやらされて「だからそれが普通なんだってば。」
「はぁ!? あれは残酷だろ! 俺はあんな事されたらキレるね」
「アンタ沸点低いもん。家事とか普通にしなきゃでしょー。我侭坊ちゃんはこれだから嫌だね!!」
「んだと…!」
声は低くなっても全然恐くないぜノーコンピッチャー!!
そんな馬鹿は気にせず私は話が通じる人間に話を振った。
「ねー、秋丸だってそうだよね?」
「俺?」
「いーや、秋丸だって俺と同意見だな」
「アンタと同意見なんてそうそういないに決まってんでしょ、沸点ミジンコレベル野郎が。」
「何だよその沸点ミジンコレベルって!!? てめっ、!!」
「それぐらい小さな事ですぐに起こる超短気野郎って事よ!!」
「何だとぉ!?」
「あっ、ゴメンね秋丸! どぞ!!」
「……別に、家事させられるぐらいは普通じゃない?」
「ホラ見ろー! ソレ見た事か!! あっはっは!!!」
「お前テンションおかしい。無理だろ秋丸、アレは。どう見たって俺は許せねぇ」
「……榛名、お前自分で家事した事ないだろ?」
超ド級の笑顔で榛名の肩に手をポン…なんて置きながら秋丸は言い放った。その瞬間榛名は固まった。やっぱりな!!
「…っ、じゃあ! お前らの言う惨いってのは何なんだよ!!」
「あ、お前自分が不利になったからって話題変えたな!!」
「うるせぇな! 良いから言えよ!!」
「…はぁー、まったく。その我侭に毎度毎度付き合ってやってる方の身にもなって欲しいもんですねぇ、秋丸くん」
「そうですねぇ、さん。」
「うぜぇー」
何か、ふと思ったんだけど。
もしかして榛名ってば…………グロいの駄目、とか?
うわっ、それだったら凄い良いネタになりそう!! 超S野郎のクセしてグロ系は苦手なんて!!!
「じゃあ教えてあげるよ」
「?」
「見てて秋丸。今からこの余裕な俺様顔をなっさけない面に変えてやる。」
「……(俺たまにが男に見える…)」
「ハッ。出来るモンならやってみやがれ」
「へぇ…。じゃあ、何だったか忘れたけど。「お前ここでその発言はないだろ。」
「良いじゃん別に! 多分シンデレラだった!! 多分!!!」
「ガチで信憑性薄いな」
「えーっと、あれよ。確か継母に衣装箱の中から良い服を選んで貰う為に継母を呼んだワケね」
「…あんだけボロボロの服着させられてんのに衣装箱とかちゃんとしたもんあんのかよ」
「知らないわよ、テレビでたまたま見たんだから。そしたら継母が来て適当に衣装箱の中覗き込むワケよ」
「ヤケに素直な継母だな。」
「ツッコむべき点はそこじゃないよ。で、昔の衣装箱ってかなり重いらしくて、蓋とかメチャクチャ重かったんだって」
「へぇ」
「んで、継母が衣装箱覗き込んでる隙にタイミングを見計らって思いっきり蓋を落としたの!!!」
「…………・・・…………………で?」
「(あ、今精一杯頑張って返事したな) 継母は首の骨折ってオジャンよ」
「オジャンてお前……!!!」
「ねぇ、秋丸?」
「そうだよね」
榛名が凄い「えぇ、お前ら何だよどこの星の生物だよ」みたいな顔で見て来る。
あ、やっぱりコイツグロいの駄目なんだ!! 自分でSっぷりを日々披露してるクセして!!! 自称Sのクセして!!!!
「秋丸はー? 何か知らない?」
「えーっとねー…。あ、白雪姫でさ」
「ほうほう」
「黙れよー、お前ら黙れよー」
「黙れ肝っ玉極小男めが。」
「っ!? 、お前なぁ!!!!!」
「秋丸、続きっ!」
「えー……あの、白雪姫と仲良い鳩、いたじゃん? 白いの」
「あー、いたいた。最初の方だけ出て来たよね」
「それが確か……「その話も残酷だよな!」
「何でそこでアンタが入って来んのよ…! 大人しくその辺で草でもいじってなさいよ!!」
「何だよその人生終わった人間の象徴みたいな行動!! だって白雪姫ってあれだろ、継母に言いつけられた狩人に不条理に殺されかけたりしたじゃん?」
「あー、そうね。そうそう。で、秋丸続きは?」
「うぉい、! お前話真面目に聞けよ!!」
「だってそれビデオで普通にあったわよ。ディ○ニーで当然のように映像化されてる部分よ」
「え……」
「あ、思い出した。確かその白い鳩がさ、あの痛そうな足で継母の目玉ほじくり返すんだよね