暖かい背中が







元希の隣にいて歩いたり、座った時に横をジーッと見ながら私は思わずウットリとしてしまうクセがあるようだ。
すっごい暖かそうで、頼り甲斐のありそうな身体を見ていると羨ましいなんて思ってしまう(いや私は女だから身体の出来に男と違いがあるってのは解るよ)。




「……元希って腹筋とかちゃんと鍛えてる?」
「あ? 当たり前だろそんなの。俺野球部だぞ。将来はプロになる男だぜ? 腹筋鍛えてねぇってどうすんだよ」
「いや……固いなぁって」




元希の腹筋を最初はペチペチと触る程度だったんだけど、何となくグーで殴ってみた。




「がっ…!?」
「え、ゴメン!? そんなに利いたの!!?」
「な、何………おま、俺に恨み、でも…」
「ないよー! あるワケないよー!! ご、ごめんなさい出来心なんですー!!!!」




結果元希は撃沈した。やっぱり鍛えているからと言っていきなり殴ったのは悪かったようだ。私、これでも一応普通の女の子よりは筋力ある方だしね。この間の握力の測定でクラストップになれたことがささやかな喜び…って違う!!




「ご、ゴメンね元希ー!」
「うぅ…おま、吐いたらちゃんと片付けろよ」
「マジすか…! ほ、ホントごめん…元希が実は完璧じゃないんだなって解ったよ…
「ふっざけんなよこの阿呆…!!!」




軽くこつんと頭を叩かそうになって、普通の子なら軽く受けて可愛らしく「あいたっ」とか言うもんなんだろうけど、些か私は普通の事は似たり寄ったりなので、思わず反射神経でその腕を受け止めてしまった。




「……おい」
「わお。何?」
「お前なぁ! 俺の腹殴ったんだから頭軽く叩かれるぐらい素直にされとけよ!!!」
「す、すいません何か条件反射だったんです小さい頃から身体に叩き込まれてるんだもの…! そうだ、元希の俺様気質みたいに!!!」
「それは条件反射とかその他諸々には含まれません」
「そーでした榛名くんのもとからの性格でしたね。生まれ持った失敗部分だよね」
「…………何かなー、ちゃんは俺に襲って欲しいのかな?」
「まっさかぁ。元希くんとヤったら私翌日凄い腰痛に悩まされるんだからー」
「女が露骨に言うな」
「元希が言わせるよう仕向けたクセに」




あーはいはい、と気だるげに元希は言うと、自分のベッドに寄りかかって今まで腹を擦っていた手を休めた。
擦る手を止めたということはさっきよりは楽になったという証拠なんだと思うけど、私は逆に擦るのをやめられたそこに目がいってしまい仕方がなくなった。
思っててもどうにもならん。四つん這いになってたどたどしく元希に近付くと、元希の奇怪そうに私を見る目が私の視界に入ったが、そんな事日常茶飯事なので気にせずに元希の足の間に入ってそっと腹筋を擦ってみた。




「ちょ、おま、この雰囲気でまた殴ったらシャレになんねぇからな」
「大丈夫だよ、もう殴んないって。擦ってるだけじゃん」
「あー、気持ちぃ。その調子で。いきなり押したりするなよ」
「……(ぐっ)」
「すんなっつっただろ!!!」




軽く押したらやっぱり怒られた。軽くしたのに。鳩尾は痛かったね、ゴメン反省します。




「すっごいねー、鍛えられてるぅ〜」
「それはひやかしか、テメェ」
「いや、素直に賞賛をね」
「……ふぅん?」




だってホントに綺麗に鍛え上げられてるなぁって思うんだもん。
ちゃんと腹筋割れてるし。中高生の男子でそーいうとこって結構レベル高いと思うよ。確か友人が昔そんな事を熱弁してたっけ。筋肉マニアめ。









「…?」
「…んー…?」
「何、どうしたのお前。やけに積極的」
「いや…何か元希の背中って良いなーって思ってさー…」
「…へぇ」
「おっきくてさ。カッコイイと思うワケですよ私としては」
「そりゃ嬉しいことで」




無意識のうちにとっていた行動は元希に抱き着くことだった。
高い身長で、高いところから見下ろされる。嫌な気分じゃない。むしろそれが心地良いとさえ思えるような。




「元希ぃー」
「あ?」
「好き」
「ん」
























「元希の背中と身長」
「そこォ!?」









ものの1、2時間で書き上げた作品。わぁ、変なところが沢山あるねでも気にしないで。orz
最初は身長コンセプトで、背後から榛名の背中に抱きつかせようとしたんですけどね。
2007.11.18