そんなの別次元だろ、なんて思った。

普通の人間がそんな事出来るワケないじゃん。

多分サンがちょっと次元のズレた人って思えば納得出来るけど。

……別次元にした途端に納得出来ちゃうサンの行動もある意味凄いよねー……。














その話題が持ち上がる原因となったのは迅がテレビでアナコンダを見てスゲェと言った事からだった。

確かにアナコンダは凄いだろう。確か人1人丸飲み出来るんだから並のデカさじゃない事だけは解る。

多分迅はあれだ、「世界○見え」とか観たんだきっと。

さっきサンも昨日ライオンvsトラの戦いを白熱しつつも固唾を呑んで見守ったものだと騒いでた(騒ぎ過ぎて家族からは怒ら

れたり呆れられたりしたらしいけど)(オレなんて帰って飯食って風呂入ったらすぐ寝るよ)。




「あ、聞いて聞いてー。すっごい話ー」




サンがそうやる気なさげに言うと、オレと迅はそっちに視線を向けた。

サン、今度は何言い出すんだろ。




「今日さ、うちのクラスの担任の先生がね」

「あ、知ってますよー。戸村センセーでしょォ」

「そ。良く他学年のクラス担任まで憶えてるねー。利央すげぇ」

「えへへー」




実際はあのセンセーデカいから良くオレと同じ目線で目が合っちゃったりとか、サンのクラスにいる時に廊下で早く自分の学

年の階に帰れとか注意されるから嫌な意味で憶えてるだけなんだけど。




「数学の授業中にね、いきなりマムシが出て来てね」

「「マムシぃ!!!??」」

「Yes, that’s right!」

サン、何で英語?」

「ん、何となく。で、マムシが出たワケだけどもね」

「はぁ……」




早速サンの話はオレとは別次元で起こるらしい。

普通マムシとか出ないっしょ!!!




「教室の中に入って来て皆一斉に立ち上がっちゃって逃げ惑ってんのさ。たかがマムシ1匹に笑っちゃうよねー」

「その状況で平然と人間観察が出来るサンがオレ信じらんない。」

「オレも……」

「だって私別に蛇恐くないし。昔頭踏み潰した事あるし。

恐ぁっ!!!!? ちょっ、何サン!! 絶対女じゃないよ!!!」

「それは暗に男だと言ってるの? 私正真正銘女なんですけどね女顔の利央くん!!!」

「……っ!!! サンひでぇっ!!!!!

「ふん! 利央が私に女じゃないとかそーいう事を言うから……ってあー、ゴメンゴメン泣かないでよ。ほら、そーいうとこが女っ

ぽい……って泣くな―――!!!!

さん、利央は放っておけばその内自力で復活します」

「あ、そーなの? ぽ、ポジティブなんだねぇ……」




ちょっ、何この人達酷くない!?

大体サンだってオレの事女顔って………女顔って………!!!(マジで泣きそうなんだけどォ)




「で、その後ってマムシはどうなったんですか!?」




迅はオレの事なんて放っぽり出してサンに話の続きを訊きだした。

あれ、珍しい。迅が自ら話を進めて欲しそうにするなんて滅多にないのに。

え、何コイツ蛇好きとか!?




「何とね、戸村先生がマムシの首をガッ! と掴んでね!!!」

「おぉお!!」

「何でかは忘れたけど首から切り落としたんだよ!!!

「えぇぇぇええええええ!!!?? スッゲェェエエエ!!!!」




え、迅は別に蛇が好きというワケでもない?

何か聞くだけだと凄く恐ろしい話なんだけどォ……。




「それで、皮剥いだ。

「マジすか!? 皮!!??」




ちょ、あの戸村センセーでどんだけ恐いんだよ……。

マムシの首掴んで切って皮剥いだ? ありえねぇ…。

どうやらサンも戸村センセーとやらもオレとは次元が違うらしい。




「しかもその後胆のう取り忘れたってショック受けてた」

「胆のう?」

「何か高いらしいよ。2、3万はするんだって」

「へー!!」

「それとマムシの目玉を生で食べたら目に良いらしいよ」

「…うぇえ……」




想像しただけでも気持ち悪くなるような話だ。

目玉を生とか無理でしょ、フツー。














その後慎吾サンと山サンが部室に入って来て、迅が蛇の話をしてやろうと思って近付いたら慎吾サンが何でかそのマムシの

皮持ってて迅がメチャクチャ驚いてた。そりゃ白蛇なら縁起良いから解るけどさァ……。









って、何でサン羨ましそうに見つめてんの!?










何故かサッサと進んでしまった…!!
あ、これ、実話です。知り合いの学校の先生がこんなんだったらしい。
「戸村先生」と言って解る方がいらっしゃったら友達になって頂きたい……!!!

2007.9.24