部活も終わって、家に帰って、お母さんが用意してたご飯温めて食べて。
あとは寝るだけだったのに。
現在夜の10時30分。外は暗い。
今我が家には両親は何か不在。田舎のおばあちゃんが階段から落ちて腰打って入院してるからそれの看病の為に行ったって
聞いたような気がする。
娘1人なんだからせめてお父さんくらい家にいてくれたって良いじゃん。
そして、普通にテレビを見ていたら当然のように突発的にホラー映画(しかも和モノ)の宣伝が流れ出して、でもそんなの気にし
てる場合じゃなくて、ビタリと固まっていたらいきなり停電して―――。
「ぎゃあああああああああああっ!!!!!!!!」
近所迷惑とかそういう事考える暇なんてないくらい、叫びながら家を出た。余裕なんてない。
思わずスリッパと運動靴を左右に1つずつ履いてるぐらいない。
「う、うわー、どうしよ……今更あの家入れないよ…! というかあの短時間で良くここまで走ったね自分…!!」
我が家が随分と遠くに見える。きっと今のタイムならこの間の体育祭でも1位取れただろうに。
いや、今はそんな事関係ない。とにかく私はこんな格好でどうすれば良いんだ…!! こんな格好で…。
さ、財布ないし、どうせ寝るだけだからって上下変な組み合わせだし、履物は左右種類が全く違うし。しかも片方はお父さんの
スリッパってどーいう事よ私。このままで大丈夫なのか。
そう、あとは寝るだけ。解ってる。今家に帰ってあとはベッドに潜り込んで寝るだけなんだ。
……なんだけど、それが恐いんだから仕方ないじゃない!!!
…おや、こんな時間に出歩いている人発見。なんて物好きな。
普通に帰る家があるんならさっさと帰れば良いじゃん!!! いや、別に私だって帰る家がないワケではないけどさ。
でもなーんかあの背格好…見覚えあるような……?
「…………あっ、榛名!!!」
真夜中のオーヴァーチュア
榛名は私の呼び止めに応じ、その場で立ち止まってゆっくりと振り返った。
何だその訝しげな目は。
「………?」
「そう、イェス、ちゃんです。何で榛名がこんなとこにいんの?」
「いや別に……。すげぇ格好だなお前。」
「スルーかよチクショウ!! ……ね、榛名。ちょっと、ものは相談なんですがね……」
「あ? 俺お前送る気とかねぇからな」
「この悪魔!! 何!? 私にここから家まで真っ暗な道を1人トボトボと歩いて行けって言うの!?」
「おう。」
「最悪だよ。酷過ぎる。熊1匹サバンナに置き去りにするのと一緒だよ。」
「そこで自分の事をウサギとか称さないお前はある意味凄い。」
「流石にウサギはないでしょ、ウサギは。きっと熊でもサバンナでは生きていけないよ」
「何で。頑張れば生きていけるかもだろ」
「無理だよ、鮭いないもん。」
「…………………。」
「なっ、何よその哀れんだ目は―――っ!!」
「…別に? ほら、大丈夫だ。別にここはサバンナじゃない。暗いだけだ。そしてお前は人間だ。生き残れる。」
「アンタ私を今まで何だと思って接してたワケ。」
確かにそんなサバンナで他の野生動物に襲われて死ぬとかそーいう事はないけどさ。あってたまるかそんな事。
「あ、あのですね、榛名くん」
「え、ちょっ、気持ち悪い呼び方すんなよテメェ」
「んだとコラ…!! え、えと…ちょっとお家に置いて頂きたいなー、みたいな…」
「却下。」
「何で!! ご迷惑はかけませんから! マジで恐いんです!! 家さっき停電しちゃって!! しかもその寸前にホラーもの
のCM見ちゃったから余計駄目なんだって!!!」
「何で俺ん家なんだよ」
「今出会ったのがアンタだからよ。」
「やだね。俺これから走りこみすんの」
「そのカッコからするにもう終わったんでしょ」
「バッ…!! 家に帰るまでが走りこみだろが!!」
「そんなん遠足と一緒じゃん!! アンタ遠足気分で走りこみやってんのかよ!」
「んなワケねぇだろ、バカ。さっさと帰れ」
「何でここでせめて送ってってやるのひと言が言えないのかなぁ君は!!」
「何で選択肢がお前送るか家に入れるかなんだよ」
「頑張って譲歩してやった結果じゃない。」
「どんだけ些細な譲歩なんだ。」
何コイツ。今ここで話しながらもどんどん自分の家の方へと足を進めてるっぽいよ。送ってくれる気はなさそうだよ。
だって我が家と正反対の方向に行ってるもん。あっ、もう見えなくなっちゃったよどうしよう!!!
「うわぁどうしよう! 自分の家が見えなくなった事で余計不安が募り始めた!!!」
「情緒不安定だなお前」
「うるさいな! ちょっ、止まって! ストッププリーズ!!」
「うるせぇよ! 近所迷惑だろうが!!!!」
「アンタの方が随分大声なんですがね。」
「お前っていきなり冷めるからムカつく。」
悪かったわねいきなり冷める野郎でさ。
性格なんだから仕方ないじゃーんとか言い訳したいけど言っちゃうとまた色々と言い合いした挙げ句このまま放置されそうなん
で黙っとこう。
「と、とにかく頼むよ榛名…!」
「やだ」
「……解った」
「あ?」
「1人でトボトボ帰ってやるさ」
「おー、そうしろそうしろ」
「途中で襲われたりしたら榛名の所為だからね」
「お前は襲って来た相手をぶちのめすような奴だからまずそんな心配はねぇな。」
「……じゃ、榛名!」
「んだよ」
「明日のロッカーの中身楽しみにしてろよ!!!」
「はぁ!? ちょっ、待て!!!! 俺が悪かったっ!!!!! 俺ん家来て良いから!!!!!!」
やっぱ最後は脅しよね!
⇒はい、零さんへの相互記念ものです……!! 中途半端ですいませ…っ!!!orz
榛名ってそこまでノッてくれそうなイメージがないんで島崎と違ってムズいね…!!! 1つ冒険させて頂きました^^
それでは零さん、こんなものですが受け取ってやって下さいませ…!(返品可能) リンク感謝です^^
2007.10.2