Moonshine〜月あかり〜




「あの、佐助さん」
「ん? どしたの、姫」

はニコリと微笑み、足元の方を指しながら

「これ、どーいう事だか説明して頂けますよね?」

と言った。
優しげにそう訊いたにも関わらず、佐助の表情は些か引き攣っている様に見える。
佐助は苦笑しながら、目のやり場に困った挙げ句、の足元を見た。
そこには何故か子供が一人いるのだ。
良く知る人物の影を色濃く残しているその顔立ち。

「いやァ、どこの子なんだろうね? しっかしすっごいな〜、まるで生き写しみたいな「佐助さん!!」
「……はい」

その子供はずっとの傍から離れようとしないで、今も彼女の内掛けの端を握っている。
黙り込んで何の声も発そうとはしないが、ただじぃっと佐助の方を睨み付けている。子供ながらに結構強烈だ。

「実は、俺様が別に何かしたって訳じゃないんだけど…。伊達に偵察に行ってて」
「えぇ、存じ上げております」
「…それで、屋根裏から竜の旦那の行動を伺ってたんですよ」
「はぁ。…佐助さん何か喋り方おかしくなってますよ」
「だってさ…。姫、俺様にこれ以上言わせんの!?」
「当たり前です! きっちり、私が理解し納得出来るまで!!」

絶対にこれじゃあ理解も納得もしてくれないよ…、と佐助は呟いたが、はそれに対しては耳も貸さずに洗い浚い全て吐け、と強要して来る。
佐助自身もあまり良い気はしなかったが、主君の正妻だし、無下に扱うという事は不可能。
大人しく、またぽつりぽつりと言い始めた。

「…そしたら、右目の旦那が何か茶菓子みたいなの持って来て、竜の旦那に『お毒見も終えましたのでどうぞ』とか言って、それを差し出して、旦那がそれ食ってた」
「……それで?」
「それ以降俺様別の仕事があったからすぐに抜けたよ?」
「え…。……そしたら、その南蛮の茶菓子が怪しい…よね」
「そうだろうけど…。でも、話によればその毒見をした部下も右目の旦那も全く何の変わりもないんだよね」
「えぇぇ…。何それ、おかしいでしょ…。何で……」

は不安げな顔で足にしがみ付いている子供を見遣った。
彼女が眉の両端を下げて見て来るので、子供の方も困った様子で見つめ返した。今にも泣き出しそうな表情にも言葉が喉に詰まった。

「…何でこんな……」
姫、ちょっと落ち着こう?」
「佐助さん、だって、何で…!!!」












「政宗が幼くなっちゃってんの……!!?」












その嘆きは咲き誇っている桜の花弁を巻き込みながら吹いていく風に掻き消された。






あとがき
はい、梵時代にレッツゴー!!!(笑)
正直言うと、弟が幼い時(6〜13ぐらい)は姉の方が17、18ぐらいが好みで、弟が15以上ぐらいだった場合は姉と1、2歳差が好ましいです(すっごくややこしい)。
だけど必然的に近い方が良かったんで、こーいう番外編でハッチャけちゃえ!みたいな感じですよ今回。←
姉に懐く可愛い梵天が書きたいです…!!!!!
2008.04.01