Moonshine〜月あかり〜




「姉上姉上っ! 俺次は槍の稽古がしたいです!!」

やばい、今鼻血垂れちゃったりとかしてないかしら。



















意地でも佐助さんから何かもっと有力な情報を聞き出そうとする事数刻。
問い詰められる事に限界が訪れたのか、佐助さんは半ば自棄になって

「あー、もう解ったから!! 俺様が今から竜の旦那がこうなったわけ調べて来るから!!  姫はそのちっこくなった竜の旦那と遊んでて!!!」

と叫んでその場から消えた。

知らない人間がいなくなった事で安心したのかは知らないが、政宗は凄い幼い笑顔を私に屈託なく向けてくる。
幼少の頃たくさん見た筈のそれは、私の歳が違うからなのか、とても昔とは違うもののように思える。

いや、本当に私を殺そうとしているとしか思えないような笑顔。
こっ、小十郎さーん!! ちょっと政宗をお預けしたいよ!!!!

……あれ、そう言えば。
政宗は幼くなっちゃったけど、今の私の容姿を見て「姉」と特定出来たという事は脳や記憶はそのまま…? いやいや、何かそれだと佐助さんを知らなかったという事に合点がいかないだろう。

「ねェ。私が誰だか解るの?」
「? 姉上でしょう?」

やっぱり解ってるっぽい。
あれ、何か色々ごちゃ混ぜになってる。
縁側で政宗を膝に乗せて座って、庭園を見ながら次々と疑問を投げ掛けてみた。

「じゃあさ、さっきのお兄さんは知ってる?」
「知りません、あんな輩。姉上に対して馴れ馴れしい」

・・・・・・・・えええぇぇええ?
もう何だか色々掴めない。どういう事なのか、これは。

「自分の名前は?」
「…………梵天丸、ですけど」

訝しげに私を見つめてくる。どこか不安げな瞳。
いや、待て待て。今自分の名前を梵天丸って言った?
そしたら記憶は幼少の頃って事でしょ、元服前って事でしょう!?
なんで今のこの成長した姿の私が姉だと解るの!!!? 政宗…じゃなかった! 梵天の容姿からして今は10歳前後ってところだから、それだったら私の容姿は精々12、13歳ってところが妥当だろう。自分でも流石にそんな歳から見目が変わってないとは思えない。

「……小十郎さん、は解るのよね」
「………姉上、乱心ですか?」
「いや、大丈夫。……あれ、乱心かな

最早自分でも自分がいまいち解らない。
本格的に悩み始めたその時、

!!」

今の私のこの疑問だらけの状況を打破してくれるのか、それとも余計ややこしくするのか。どちらか甲乙付け難い人物が現れた。



言うまでもないが、私の夫の幸村様だ。


・・・・・・・・・うわぁ、何か今自分で思ったクセに恥ずかしくなっちゃった!!!



「幸村様。」
「こちらにおると聞いて……。何をしているのでござるか?」

幸村様の視線は不思議そうに梵天の姿を捉えている。
…そりゃあ、見るよな。

「幸村様、あの「いつの間にややなど生まれたのだ?」









この人のこの天然さってどこから来たのかしら。
















あとがき
何だかものの数時間で書き上げちゃった…!
前作との時差は気にしない、気にしない…!!!←
何だか管理人も頭の中ゴチャゴチャです。何がなにやら。
政宗の姉ちゃんなんでまぁ20歳は越えてますが、テンション的には10代ですから。作中一番子供らしさを見せると思います。
ま、取り敢えず梵天を膝の上に乗せたかっただけです(それだけか)。
2008.04.13