「はァー…。幸村の奴は捕まんないし……」


今の私は『溜息を吐くと幸せが逃げる』なんて迷信など一切受け付けない。
幸せなんて逃げて行く時には勝手に逃げて行くもんなのよ。


「……自分でも凄い説得力があると思うわ、今の言葉」


全くその通り。
だって実際そうだと思うもん。世の中そんなのばっかりだと思うし。

とにかく幸村はまだ捕獲出来ていない。
取り敢えず主な部屋は掃除したが、まだまだある。ここはあの体力馬鹿の出番なのに!

その時、パシャッと池の鯉が跳ねた音がした。


「あ、ヤベ。餌やってないや」


庭の端の棚に確か餌を買い込んでいた筈だ。基本的に鯉なんてものは犬とかと違ってたくさんコミュニケーション取らないといけないってワケでもないから世話が非常に楽。
犬とかだったら私放っておけないしね!!! ……幸村はそれに分類されるのかなァ。

そんな事を考えながら縁側に出ると同時に、見覚えのある毛と瞳。


「きっ、昨日の…っ!!」


ドタバタと駆け寄ると、狐は前足を縁側に乗せてこちらを見つめて来る。
キュンて来た!! 今キュン、ってなった!!!


「かっわいすぎる…!! 狐も恩を憶えてちゃんと返すんだねー。鶴の恩返しならぬ狐の恩返し! ま、なんて期待してもしゃーないからしませんけどね」


昨日みたいに馬鹿正直に期待するのはいけない。上げられて上げられて落とされるのが今までの私に対する相手の常套手段だった!!! あれかなりキツいんだよねー…。
狐の方は多少困惑した(ような)表情を浮かべている。


「あー、ごめんねー。ってかもう歩けるようになったんだ。回復早いな」


すると鼻をぐいぐいと私の手に押し付けて来た。少し湿ってるっていうか濡れてるっていうか…ってか何だこの可愛い生物は。


「そう言えば何咥えて……」


良くその狐が咥えているものを見れば、それは私が昨日応急処置の為に使ったハンカチ。


「わ、わざわざ持って来てくれたの!? ホンット良い子!! 野生の狐にしとくのは勿体無いね!!!」


狐の顔が益々キョトンとなった。
絶対心の中じゃ「何だこの変な人間」とか思われてるんだろうな!!
ゴメン正常だから逃げないでね!!

そんな私の心の中の必死さなど全く我関せずみたいな感じだけど、その狐はその場でじっとしている。
パタパタと小さく動く尻尾に萌えを感じるわ…!!
多紀ちゃん、今やっと私アンタの言ってた事が解る気がする…!!! どうやら私は動物に萌えるんだな。

しかし受け取ったハンカチを見ると血痕がない。……そんな筈はないっしょ。だって私が狐の傷口にハンカチを付けた瞬間にあんなに鮮血が滲んでいたじゃないか。
だったら、おかしい。
おまけにあんなに酷かった足の怪我まで治ってるし…これは、いくらなんでも変ッスよねー…。













そこで私の記憶は一時暗転。

















その間、あの「 」と呼び掛けてくる声は、一向に止む気配さえも見せなかった。










推測ミステリー











あとがき
第2話目!!!
短いですねー…orz
と言うか全く喋らないしね、まだ…! つ、次です!! 次かその次ぐらいに佐助が喋りますよ!!(アバウト)
それにしても佐助が喋ってくれないと誰も名前呼んでくれないじゃん…。前回はまだ1度だけ幸村が呼んでましたけどΣ(oд○;)
毎回最後のとこしか名前変換ないじゃないか!!!
それにしてもやっぱりほのぼの重視で行くとさしたる事件も何も起こりませんね! 主人公の中では大変な事件ですけれども。^^





2008.06.14