「はい、ドッグフード」
「…イヌ科とは言ったけどさ、別に俺様何でも食えるよ? おつまみでも」
「それ私が出て行く前に言って欲しかったな。」
そうすれば無駄な出費もなかったのに。しかもちょっと高めの缶詰買って来てやったのに。おまけにコイツ絶対袋の中のおつまみ見てそう言ったな。
いつまでもあんなビクビクとした姿勢じゃなめられる! 何だか暫くの間ご厄介になりますオーラが出てるから、今の内に上下関係はハッキリさせておこうと言うコトで口調が微妙に変わったワケだが(素が楽だわ)、心なしかフレンドリーな関係を築いてしまっているような感じがしないでもない。
「…ってさ、女子高生でしょ? オヤジみたいな好みなんだね」
「煩いわね、美味しいんだから良いでしょ!」
「チーかま、さきイカ、アーモンド……酒は?」
「そこまでは踏み込んでないわよ。何、アンタ飲みたいの?」
「別に飲みたいとかはないよ。甘酒ぐらいならたまに飲むけどさ、でもアレってお酒って感じじゃないんだよね」
…狐が酒について語ってるよ。
何かもうコイツにしてみれば、至るところが謎だらけだから今更深く考えようとはしないけど(人語喋ってるし尻尾9本あるしね)。
「取り敢えずアンタは先にそのドッグフード食べちゃってね。大丈夫、人間から見ても美味しそうだから!」
ちょっとムッとした顔(に見える)をした狐に、一応保証しつつ奨めて見る。だって少し美味しそうに見えるんだもん、最近のドッグフードって。
「別にそこはどーでも良いんだけどさ。ちゃんと名前で呼んでよ」
「? 何の?」
「俺様の。流れ的にそうでしょ」
「えー…。(何故にそんなコト…) じゃあ、名前何?」
その瞬間、狐は「は?」とでも言うような素っ頓狂な顔をした。何で。
「はぁ? だ、だって、でしょ!?」
「そ、そーだけど…って何でフルネーム割られてんの!!?」
「だったら夢! 夢で俺様の名前聞いたでしょ!?」
…名前? この狐の?
……そんな夢見たコトもないし、名前を聞いた憶えだってない。
「いや…ご期待に添えず悪いけど私は一切そんな夢は…」
「嘘だろ!? だって俺様ちゃんとの名前呼んだよ?」
「だから…」
…待て……名前を呼んだ…?
現にこの狐は普通じゃないし、私の名前も知られている。だとしたら、あの夢が、もしかしたらそうなのかも知れない。
「…名前なら、呼ばれた…」
「でしょ!? で、俺様もちゃんとに呼ばれたし」
「…? いや、呼んでないよ?」
「え゙?」
「呼ばれた記憶しかないもん」
「で、でも、呼ばれたって事は俺様の姿ちゃんと見たでしょ!? 本当の!!」
「何ソレ。だって真っ白な空間しかなかったもん。名前呼ばれるばっかり。不気味ったらありゃしなかったわー」
「……おかしいなー。俺様達確かに名前聞いて呼び合った筈なんだけど…」
何だか今、私はとっても不愉快だ。
この狐の言っているコトは途切れ途切れになら判る。でも、靄がかかったように判らないところもある。正直、苛々して仕方がない。
「…もしかしたら―――…」
「え、解ったの!? 原因!!」
「仮定ってか、恐らくだから…。でもあっちも軽くタブー犯してるワケだし、俺様だって少しぐらい…」
「ん?」
「いや! …じゃ、俺様の口頭で名前言うから、忘れないでね。すぐにフルネームで声に出して言うこと!!」
「う、うん。」
何があるのだろう。名前なんて基本的に口頭で交わすものではないのか。
でも、どことなくこの狐の顔は神妙だ。
「じゃ、言うからね」
狐は口を閉じ、また開いて―――口パクで伝えて来た。
「…え、あの、口パクっスか…?」
「…ッ!! あの野郎!! 変な事にばっかり手ェ込みやがって!!!」
ちょっ、今までと口調が違い過ぎてない!?
恐いんだけど! まさかこれが本性…?
人間は怒ると本性が現れるというけど、狐も……?
怒りを顕わにしていた狐は、あ゙〜っと唸った後、何か諦めたように溜息を吐いた。
「……良いよ、明日にでも教えるから」
「…出来るの?」
「が読唇術使えればね」
「………え?」
「冗談だよ。…ま、コレ自体に期限はないし…。それにの反応、俺様すっごい楽しみにしてるから」
「…何でよ。そんなに大きなリアクションが期待出来るコトでも起こるワケ?」
「朝になれば解るよー」
(はぐらかされた……)
…明日の朝、私にはどんな苦難(勝手に決定)が待ち構えているのか…それはまだ予測不可能だった。
「…………ぜ―――ったいにコレ、あの人の仕業だ…!! 呪術返しでもしてやろうか…ッ!!!」
ボソリと聞こえたその台詞を、私は忘れようと必死だった。
青春ラビリンス
あとがき
益々深まる一方の謎。
ヤバい、私こーいうの苦手なんだけどどうしよう!! 推理小説とか読めないタイプなんだけど!!!←
こーいう時って早くネタバレしたくなりませんか? いや、私だけか…。
さてさて、次こそは…!! 何か当初と設定変わって来たな〜orz
2008.08.14