星空も月明かりも




梅雨は明けたかと思われたが、まだ多少は残っていたらしい。
雨が降って来た事を理由に、は縁側で久し振りに一緒に茶を飲んでいた夫と自室に入り戸を閉めた。


「最後の最後で何やら激しいのが参りましたねェ」
「うむ。この調子だと


ピカッ

ゴロゴロゴロ……


「わぁっ、雷! 幸村様、聞きました!? 結構近そうでございますね!!」
「……そうでござるな」


雷が落ちると言おうとしたところで丁度タイミング良く本当に落ちて来た。
それよりも驚いたのは妻の反応だ。普通の女子は雷など恐がるものではないのか。
現に今まで幸村が見て来た女子達はそうだった。
やはり自分の妻はどこか違うらしい。
恐がるどころかわくわくとしている様子だ。はしゃぎまくっている。
何だかもう慣れて来た。
少しだけ戸を開けそこから外を見つめるの後ろ姿を見つめて幸村は少し笑った。
空を見守るは稲妻が疾る度にピクンと反応を示して童子のように喜んでいる。


「あら、雨、もう止んでしまわれました」
「もう少し多く降っても良さそうなものでござるな。これからの日照りに作物が耐えられるかどうか」
「そうでございますね。…あ、明日七夕なのに!!! 笹が!!」
「無事でござろう。陰に置いておいた故」
「ありがとうござります」
「それにしても甲斐に来たがこの様子では、奥州の七夕はそれは仰々しいのでござろうな」
「んー……」


は少し悩んで考える姿勢を取った。
ギュッと目を瞑って口を噤んでいる様子から必死で何かを思い出そうとしているのだろうが、何故か幸村はその表情から情事の最中を思い出してしまった。


(……って、お、そ、某は何を……!!!!!!!)


一気に顔に血が集まり真っ赤に染め上がっていく。
思わず声に出して叫んでしまいそうになったが、自身は全くその様子に気付いていないのでどうにか黙り込んだ。無駄に醜態を曝す事もない。


(…………欲求不満、なのか…?)


そう言えば以前佐助にそんな事を言われたような気さえする。
幸村も縁同様に考え込もうかとしたが、面倒になってやめた。正直なところ、慣れない事をすれば知恵熱が出るからそれも嫌で、だ。


「民の方はあまり拘ってはいないようでしたけど、武家の中では盛大に執り行われましたね。」
「っ、ほ、ほぉ、そうでござるか」
「はい」


とにかく気取られずに良かったと、幸村はそれに対して安堵の息を吐き、を困惑させた。











「…ねー、梵〜」
「Shit. 梵じゃねェ」
「そこまで頑張って何やってんの」
「短冊書いてんだよ。ホラ成実、テメェも書け」
「えー…。………うわー、梵やっぱりちゃん関連だよ。」
「Ah? 悪いかよ」
「悪いって言うかさー、あっちは結構平穏無事にやってるわけでしょ? 夫婦仲も良いみたいだしさ、無理矢理連れ帰ろうとしなくっても良いんじゃない?」
「……姉上はまだ誤解したままだ。それを訂正しなきゃ気が済まねェ」
「……ふぅん(ま、上手くやらなきゃどうせまた拒否されるのが落ちだけどね)」





「…………何やってんだ、あの二人…?」


そんな二人を見て移動中だった小十郎は足を止めて不審がる表情を顕わにした。






あとがき
間が開き過ぎた…!!!!!orz
七夕なんて一ヶ月以上も前の話だよ! もう8月だよ!!!
もうすいません、こんなグダグダで…orz
えー、この回は、別名「ムッツリ幸村」ですね(違)。取り敢えず次ぐらいまではほのぼの…かな?
その後また激しくシリアスに走りそうな予感です。
昔から既に短冊に願い事書いて笹に吊るしてたかどうかは知りませんが、一応その風習はもうあった設定で。
武家の農民との行事の重んじ方の違いは解りませんけど、まぁ奥州では一番の行事だし…。うぅ、史実探してもないんだもん…orz←
2008.08.10


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