すっごく居た堪れないんだけど。
突然やって来た伊達一味によっての平穏は無情にも踏み潰された(と本人は感じている)。
きっと既にあちらにも婚姻を結んだという報せが届いている筈なのだが……
(それか)
馬鹿だった。
誰かがあちらに遣いを送ったのだろう。それか、政宗の忍か。
どちらにせよここまで来られてしまっては打つ手が無い。
武田の人達に迷惑をかけたくはないと思いつつも戻りたくないという気持ちだって強いのだ。
政宗と幸村が睨み合いをしている最中、は夫の陰に隠れて袖をギュッと握り締めていた。
時折政宗と目が合ってしまうのが本当に辛くて居た堪れない。
「俺らは姉上さえ返して貰えりゃ良いんだよ。望みはそれだけだ、you see?」
「しかしは既に真田の身。今更伊達に戻るとは…」
「Ah!? んなモン破棄だ、破棄!!」
その時、幸村が少し悩んだ顔をして、小さく、しかししっかりとした声音で言った。
「…………某がと会ったのは武田の領地内、しかも一人でござった」
「…それがどうした」
今まで以上に険悪な空気が漂い始めた。は小十郎や成実、佐助を何度もどうにかしてという気持ちを込めて見つめるのだが、当の本人達からは苦笑やら手を左右に振る動作しか返って来ない。
「先の様子からしてそちらでに対して何らかの問題があったのではあるまいか」
その時、不躾にもと佐助は感動した。
幸村が落ち着いて凄い真面目な事を言っている、と。
(幸村様じゃないみたい! え、何これ凄い!)
(旦那も立派に成長したもんだなァ…! 嫁さん貰った効果?)
思わずその場の雰囲気に合っていない事を考えてしまう。それほどまでに彼らにとって幸村のこの反応は余りにも新鮮過ぎた。
「…アンタには関係のねェ事だ。………姉上。米沢城へ帰りましょう」
今まで幸村に向けられていた視線がに向けられた事に彼女は戸惑う。
先程までとは打って変わって優しい声音でを呼び、慈しむような、縋るような瞳でを捉えた。
自分が出て来た事に対する覚悟を甘く見られているのだろうか、なんて思えた。
それよりか、政宗が自分に対して話しかけているという事実を認めてしまうだけで咄嗟に目の色が変わった。最早本人も現状を良く理解出来ていない。
やめて、今更、そんな眼。
「い、いや……」
「…姉上?」
ポツリと呟かれた言葉に政宗は正直うろたえた。
「…?」
「嫌よ、あんな所…!」
幸村が名前を呼んだが身体が勝手に後ろに退いてしまう。ざり、と砂の音が政宗の瞳を不安げに揺らさせた。
そんな顔したら駄目って言ったじゃない。
今はあの頃とは違って立派な一国の主なんだから。
「?」
幸村が心配そうにに手を差し出した。
いつの間にか手を放していた。本人も今その事実に気付く。
だがは手ではなく、彼の袖を再び握った。
「…姉上?」
「やだッ…」
「え、」
「あんな所は嫌! 帰りたくなんてない!! 幸村様の言う通り私はもう真田の身だもの!!」
その姿が必死そのもので、後ろで見ているだけだった成実も思わずたじろぐ。
「さ、真田の地に骨を埋める覚悟だもん!!」
「!!!?」
(様…それは兵達の台詞を聞いておられたのですね…)
が政宗の足元に向けていた目を皆に向けると、皆一様に硬直していた。
(そ、そんなに変な事言った…かなァ?)
「あ、姉上駄目です! 真田に姉上のをなどと…!! 骨が腐りますよ!!!」
「何を仰るか政宗殿ォ!! 失礼な!! おめおめと伊達の領地に帰るよりは良いではござらんか!!!」
「Ah!!? もっぺん言ってみろコラァ!!!」
「ちょ、旦那落ち着いて!!」
「政宗様! お気持ちは解りますがお静まり下さい!!!」
何故か一人取り残されたかのようには呆然としていた。
あとがき
あれ、何かギャグ…?
シリアス過ぎてもなァ、と思った配慮故です(要らねェ配慮だ)。
本当は途中別の入れたい政宗と幸村の会話があったんですが(微妙にズレてる会話)、ルーズリーフには書いていた筈なのにそれを見ないでパソコンで打ち込んで後から見てみるとそれがあった事に気付き、しまったと思って入れようとしてもなかなか上手い具合に入れられそうな場所がなかったんでナシとなりました。…いや、でもこれは別の話で使えるかも。番外編とかな!!!(何)
さて、次が多分本当の波乱…?(大層な事を言うな)
ギャグ入れたくてウズウズしてるよ…!!←
それにしても私が書く政宗は英語を使わない。orz
2008.05.03
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