「とにかく…、奥州に帰りましょう、姉上」
「だから…! 私はもう真田に嫁いだって言ってるでしょ! 弟が嫁いだ姉を実家に戻そうとするなんて前例がないわよ!」
先程の雰囲気を元に戻そうと政宗は再び口を開いたが、結果的には意味のない押し問答が続いてしまっている。
正直とてこの事態にはウンザリしていた。
「…別に、ずっと伊達に居ろと言っている訳ではありません。」
「じゃあこの現状のままで良いじゃない。大体何でアンタがここに来たの? 戦でもないのに奥州を放って…」
幸村もの隣で真剣な表情は作っているものの、どことなく不安そうな色が滲み出ているのが良く解る。
は政宗に向けていた視線を逸らし俯き、か細いながらも必死な声で訴えた。
目尻に涙が浮かぶ感覚がする。やばい、なんて思っていたらポツリと地面の色が変わり、それを筆頭に点々と地面の色が濃くなっていき、あっという間に塗り替えられた。
涙と雨が混じる。ただ違うのは温度、だろうか。
残念な事にの予想は当たってしまったらしい。
ザァザァと惜しみなく降り続けるそれに嫌気が差す。何故か恐怖も憶えた。
「もう帰ってよ…何度言ったら解るの…?」
「姉上、でも」
「あそこに戻ったって私の居場所なんてない! 皆そうやって信じ込ませて安心させてから突き堕とすのよ!!」
「様、何を!!」
「姉上の居場所ならちゃんとあるじゃないですか!!」
「皆裏切るのなんて目に見えてるわ…! 最初に裏切ったのは政宗じゃない!!」
「!!?」
その叫びに政宗はビクリと身体を振るわせた。
自分では裏切った憶えなどない。姉が一番の心の拠り所となっていたのに。
「ちゃん」
その場にいた全員がバッと声の主の方向を向いた。
いつもとは違う成実の真剣な瞳がを見つめている。
彼までもが、無謀に戻って来いなどと言うのだろうか。
「ちゃん、戻ろうよ。少しで良いからさ」
ほら、とは心の中で呟いた。
あちらに戻ったところで自分には何の利益もありはしない。損ばかりするだけではないか。
「義姫様だってさ、ちゃんに「やめてよ!!!!!」
「「「「「っ!!!!?」」」」」
明らかに今までとは違う反応。
自分の母の名前を出されただけでこの反応は、と少し皆奇妙に思えた。
しかしその場にいた彼らには即座にそんな思考になど行き着かなくて、単純に声を荒げた事に驚いた。
「だから嫌なのよあそこは!! 皆して『アレ』の事ばかり…!!!」
語る言葉に熱が篭る。自身もうどうしようもなくなっていた。
「………私は結局裏切られるだけなら帰る意味なんてないわ。……ここは誰もそんな事しない…」
小十郎がハッとした。
政宗がに向かって歩み出したのを捉えたから。
は雨の音と錯乱状態あり俯いている所為でか彼の足音に気付いていなかったが、爪先だけが視界に入って来たので目の前に彼がいる事は解ったようである。
「ちゃん、落ち着い
パシンッ
この雨が降り頻る空間には似合わない、乾いた音が鳴り響いた。
あとがき
あーあーあー!!!(何) やっちまったよ遂に!!!!←
それにしても展開が速過ぎる気がする…。orz 落ち着きがないなァ…。短いしさ。ま、いつもの事と思って下さいな!!(おい)
雰囲気で流し読みしてくれて構いませんから!!!(あとがきで言ったって)
この二人の姉弟喧嘩は今までがほんわかしてた分壮絶なものになりそうですね。(え)
2008.05.11
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