鳴り響いた音から数秒遅れて、の左頬に鋭い痛みが走った。
叩かれた、政宗に。
「痛ェか?」
何だ、その言葉遣いは。
は思わずイラッとしたが、状況にあまり着いて行けず、叩かれた拍子に向いた方向の地面をじっと見つめている。
今までは僅かな征服欲で満たされていたのかも知れない。
「俺も母上も、姉上が姿を眩ましてそれ以上に痛ェ思いをしたんだよ」
解らない。
自分のあの時の言動に怒る事はあるとしても、傷付くような事を何かしただろうか。
大体何故自分が伊達を出ただけでそのような言われを受けなければならないのか。
元々から真田に嫁ぐ手筈だった。少々の手違いがあっただけで、結果的には同じ事なのである。
だから、何故。
意味のない疑問ばかりがの中に浮かんでは何処かへ沈んで行った。
「、大丈夫か…?」
は敢えて夫に無言を通した。
心配そうな表情で見つめて来る幸村と目を合わせ、自分自身では「大丈夫」というような表情を作ったつもりでいる。
「……!! さ、佐助、布を取って来い!! 血が出ている!!!」
「えぇええ!? わ、解った、その辺で侍女に貰って来る!!」
「…………政宗様」
「…あーあ、梵、やっちゃったね」
「おっ、あぁ!? そんな強くしたつもりは…!!」
動揺がありありと見て取れた。
今のにとって何もかもが苛立ちを募らせる道具にしかなり得ない。
おろおろとした状態で政宗が冷や汗をかきながら、
「姉上、あの……大丈夫…です、か?」
と問うて来た。
覗き込んでくるその表情からも、やはりの中には苛立ちしか生ませようとない。
キッと目で殺すように殺気を込めると、政宗の顔が一瞬にして青褪めて素早く一歩退いた。
「アンタ、一国の主なんだし、醜態なんで曝さないでよね」
「え、あの、姉上…」
ドゴッ!!!!
辛抱ならんかったらしく、は政宗の頬を殴った。鈍くもすっきりするような音が、響く。
「がっ……!!!」
「ふん、ふざけるなよ。歳が1歳違えばそれだけでも偉いって何度言ったら解るんだ、お前は」
「あ、あの、様、様や政宗様のような地位の方にそのような決まりなど「私の中ではあるんですっ!!!」
「はい……」
最早「私がルール」状態だ。
小十郎でさえも大人しくしておくしかない。
・
・
・
佐助がこの騒動の場に再び戻って来たのは、丁度が弟の顔を殴った瞬間だった。拳の食い込みの角度と言い(あれは心得もない女が出来る角度じゃない)、やる事と言い、何をやっても姫らしくないと思った。
いや、最早これは「姫らしい」とか言う以前に「女」そのものがどうかしてしまっている気が、佐助にはしている。
「ホンット、どうしよっかねェ、この状況」
布を数枚持って木の上から陰に身を潜め様子を伺う。
ハッキリとした理由は解らないが、怒っているようだし、やはり先程の自分がまだいた時間に起こった叩かれた事であろうか。
とにかく今は見つめるしかないらしい。
を正直に見つめているのも何だか恐かったので、異様におろおろしている幸村を佐助は観察していた。
あとがき
シリアスなんだかギャグなんだか良く解らんorz
最初の設定よりもギャグに走った感があります。……大丈夫、なのか?
テンパる政宗。そして最近イメージが薄れかけてますが男らしい姫さんに登場して頂きました(何その二重人格みたいな)。
普通こんな事はしませんね! 姫さんはまァ…ありかなァ、みたいな←
ここでちょっと話的には一区切りです^^
2008.05.23
|