「何処行ったんだ、姉上は!!」
独眼竜は苛立ちが絶えなかった。
「政宗様、少し休まれては…」
「Shut up! そんな暇はねェ!!」
戦場でもこんな焦燥は感じた事がない。どうしてもあの時の彼女の目が忘れられないのだ。あんな目をした時の人間の心情は、経験した事のある自分自身が嫌と言う程解っている。
今の自分が彼女をあんな状態に陥らせていると思うと、悔しさが留まる事を知らない。
償うかのように、政宗は血眼になってを捜した。
最愛の血縁者を―――。
「…殿?」
「……あっ、うぁ、はい!」
「…寝ておられたか?…」
「い、いいえそんな! この伊達、このような状況下で眠るなどと…!」
そう言いつつも、とろんとしている目だとか、口の端に僅かについた涎を見つけて、幸村は(器用だな)と思った。何だか微笑ましい。
微笑を浮かべる幸村を見て、は悔しそうに眉を寄せた後、恥ずかしそうに顔を真っ赤にして俯いた。
「すみません、寝かけておりました…」
正直で素直。
好感が持てると思っていたが、やはり自分の目に狂いはなかったと幸村は満足そうに笑んだ。
「あの、私の事はお気遣いなくもっと馬を飛ばして下さって構いませんよ」
「いや、馬に乗り慣れておらぬ女子がそのような事をしたら身体を痛めるのでな。この速さが良いでござる」
「あ、大丈夫です。私慣れてますから」
「………は?」
「こう見えて日夜武芸に勤しんでござります。多少の事で弱音を上げるような身体ではございませぬ」
「…そ、そうでござるか」
「はい!」
にこやかにそう言い切られても。
女子にしては珍しいと思う事ばかりだ。
しかし余計な気遣いは無用と解ると、こちらも些か気が楽だった。
「では、速度を上げようぞ。しっかり掴まっていて下され!!」
「は、はい!!」
日没の時刻はとうに過ぎている。最早辺りは真っ暗だ。そろそろ野党が本格的に動き始める時刻でもある。敗けるなんて事は思っていないが、の身を案じれば今戦う事は得策ではない。
それに、何と言うか、幸村には佐助が近くに潜んでいる気がしてならないのだ。
忍の彼の気配を読み取れるという訳ではないが、このような時、彼はいつも何処かに潜んでいそうなのだ。
正直幸村の勘でしかないが。
(…まァ、平気でござろう)
「先にお館様の所へ参ろうぞ!」
「お館様…。あ、信玄様ですね!!」
「うむ! 積翠寺城であれば最早目と鼻の先でござる!!」
「はい!」
「陽が上り切ったら上田へ行くとしようぞ」
「はい! 楽しみです!」
「ところでその薙刀は…」
「あ、護身用です」
「……成る程。」
(…旦那、上手く話出来んのかなァ)
それを見守る忍が一人。
あとがき
話の進まなさに自分でも苛立ちを感じ始めました。どうして上手く行かないんだ…!!!
そして今更ながら「姉上」か「sister」か迷いました…。
しかもちゃっかり薙刀持ってました。自分の身は自分で守る子。
無意識的に姫の武器=薙刀なんですが、まつをプレイし過ぎてる影響なのかな…。
イメージ的に薙刀しか…!! ちなみに太郎丸が大好きです(訊いてない)。
2008/03/11
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