雨が降り出す、予感がした。
祝言の取り成しも無事終わり、と幸村はめでたく夫婦となった
が、早々にの性格が変わると言うわけでもなかった。
陽も随分高くまで上がっているし、山賊やらと出くわす恐れはそうそうない時間帯。
は一人お忍びで森の方まで入っていた。
「わァ、久々〜っ! 森は良いわよね、何か。何か楽しいわ」
誰に言うでもなく、自分でもうつけだと思えるような事ばかりが口からこぼれて行く。
一人で出て来はしたが、どうせ忍が見張りでついている事だろうし、大丈夫だろうと思う。
小娘一人出て行く事なんてばれないわけがないなと思いながらも、すぐに連れ戻されたりしない分マシだろうか。
小鳥の囀りやら川のせせらぎの音がまるで自分を癒してくれているようなので、はその場に黙っていた。
無駄な体力を使いたくないというのもある。遠出をしないと解りきっていたから、馬を連れては来なかったのだ。
平凡な時間を過ごしていると、昨夜感じたあの恐怖がまるで嘘のように思える。どうして自分があの時あの月を見て雨や雷を連想したのかが今となっては謎である。昨夜の自分の取り乱し振りは一体何だったのやら。
自分でも馬鹿馬鹿しくなった。
「……幸村様にばれてなきゃ良いけど」
やはり自分はお転婆だと、昔成実に言われた事を思い出した。記憶の糸を辿れば昔からあいつは随分と腹の立つ奴だたなァと、嫌な思い出ばかりが脳裏を掠めて行く。
「…あ、何か成実の奴殴りたくなって来たわね…!」
そんな物騒な事を思っていると、突然数頭の馬の足音が聞こえて来た。
大した数ではない。しかし面倒事に巻き込まれては嫌だと、は咄嗟に大樹の陰に姿を隠した。根元の方が太いのでしゃがんで少しだけ顔を覗かせ相手を伺った。
そして、驚くほど目を見張り、思わず声を上げてしまいそうになった自分の口に咄嗟に手を当てた。
方向から見てもしやとは思っていたが、本当に伊達軍がいるとは思ってなかったのだ。
おまけに先頭にいるのは弟の政宗。傍には彼の腹心の部下である片倉小十郎に、従兄弟の成実までいる。その他にも数名だけ、長い間慣れ親しんだ家臣の姿があった。
「政宗様、積翠寺城はもうすぐですが…いかがなされるおつもりで」
「HA! んなの決まってんだろうが、小十郎。姉上を大人しく返して貰うに限るぜ」
(!!!!!)
誤算としか、言い様がなかった。
あの状況下での事なのだから、わざわざ政宗が自分を探すとはは微塵も思っていなかったのだ。
当たり前だが伊達家の忍に見つかっていたのかと、自分の軽率過ぎる行動を呪った。
(どうしよう、このままじゃ幸村様と信玄公が…!!!!)
迷惑をかけている身なのに、これ以上どうしろと言うのか。
このままでは幸村達の身が危ない、と思われるが、流石に今の縁に政宗達の前に自ら出て行く勇気はなく、この場はこのままやり過ごし、すぐに積翠寺城へ向かおうと心構えた。
「………ん?」
「政宗様? 如何なさったので?」
「……何か、あの木のところに…いるような気がするが」
(っ!? ど、どうしよどうしよ何も浮かばない!!!)
「……まァ良い。…先を急ぐぞ」
「は」
政宗達がこちらから気を逸らした事を窺い知り、ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間。
目の前に、が大の苦手としている蜘蛛がいたのだ。小さかったが、それだけでもは十分戦いた。蜘蛛には小さい頃に嫌な思い出がある。
「ひィっ……!」
「!! 何奴!!!!」
あ、死んだ。
どこかで冷静に事体を見据えている自分が、そう呟いた気がした。
雨が降り出す、兆しが見えた。
あとがき
何だがワケの解らない文章に……!(いつもの事だけど)
シリアス感を抑えようと…姫が一人でハラハラしてるだけじゃないか←
もうちょっと進展させたい。私の文章はホント一文一文短いし進展もしないな…!!orz
2008.03.26
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